ベクトルDB・埋め込み(Embedding)とは

べくとるでぃーびー・うめこみ Vector Database and Embeddings AI・SaaS

埋め込み(Embedding)とは、文章や画像をAIモデルで数値のベクトルに変換したもので、意味の近さをベクトル間の距離で測れるようにします。ベクトルDBはこの埋め込みを大量に保存して類似検索するデータベースで、社内文書や商品情報をLLMに参照させるRAG(検索拡張生成)の基盤になります。譲渡時には、元データ・埋め込みモデル・DBの3つを揃えて引き継ぐ必要があります。

「自社データを学習させたAI」と説明されるプロダクトの多くは、モデルを再学習しているのではなく、データを埋め込みに変換してベクトルDBに入れ、質問のたびに関連する部分を検索してLLMのプロンプトに渡しています(RAG)。この方式は再学習より安価で更新も容易ですが、価値がどこにあるかを見誤りやすい構造です。ベクトルDBの中身は元データから機械的に生成し直せるため、資産は元データとその収集・整備の仕組みにあり、DBそのものではありません。

引き継ぎで問題になるのは3点です。①埋め込みモデルへの依存——埋め込みは特定のモデルで生成されており、モデルを変えれば全件を再生成する必要があります。プロバイダがそのモデルを廃止すると、再生成のコストと、検索品質の変化が同時に来ます。②ベクトルDBの名義とコスト——PineconeやWeaviateなどのマネージドサービスは契約名義に紐づき、データ量に応じた月額がかかります。PostgreSQLのpgvectorやQdrantを自前で運用していれば、その運用ごと引き継ぎます。③元データの権利——他社のWebページやユーザーの投稿を埋め込みにしている場合、その収集と利用が著作権法や利用規約の範囲内かが法務デューデリジェンスの論点になります。日本の著作権法は情報解析のための複製を広く認めていますが(第30条の4)、出力が元の表現を再生産する使い方は別です。

買主は、元データの所在と更新の仕組み、埋め込みモデルの名前とバージョン、DBの種類と契約名義、再生成にかかる時間とAPI費用を、技術デューデリジェンスで確認する必要があります。RIKKA M&Aの技術DDはリポジトリの依存関係と外部サービスへの依存を検査し、出品フォームの「利用APIサービス」「使用AI技術・モデル」にこれらを申告する項目があります。学習データとファインチューニングについては別項で扱います。