買い手向け

デジタル事業を買収する買い手向けに、技術・法務・財務のデューデリジェンスで見落としがちな論点を扱うカテゴリです。API依存度や技術スタックの持続性、契約・許認可の移管可否、粉飾や虚偽記載の見抜き方など、買収後に「知らなかった」では済まされないチェックポイントを実例ベースで解説します。

AIエディタで書かれた事業コードの権利帰属

CursorやCopilotが生成した事業コードは誰のものか。M&Aの知財表明保証が前提とする権利の明確さがAI介在で揺らぐ。著作権保護の不確実性、学習データ由来の権利侵害リスク、AIツールの規約と権利移転、委託者の権利帰属契約、表明保証・補償・エスクローへの反映を技術と法務の境界で整理する(法的助言ではなくDD論点の整理)。

Datadog・Sentry座席課金の引き継ぎ罠

観測SaaS(Datadog・Sentry)は運用品質の証であると同時に隠れたコスト爆発源だ。ホスト・座席・取り込み量・カーディナリティ・保持が掛け合わさる複雑な課金構造、カスタムメトリクスのカーディナリティ爆発、年間コミットとオーバーレージ、移管時のダッシュボード喪失、ベンダーロックインと再計装をバリュエーション視点で整理する。

商用LLM API契約は買収時に名義移管できるか

商用LLM API契約には交渉で勝ち取った特別単価・コミット割引・レート上限・データ特約が紐づき、買収という契約者の変更で維持される保証はない。支配権変更条項、データ取り扱い特約の引き継ぎ、ファインチューニング済みモデルの帰属、再交渉後コストでの原価率評価とクロージング条件化を整理する。

ベクトルDBに学習データを溜めた事業のDD

ベクトルDB(Pinecone・Qdrant等)に溜めた埋め込みは差別化資産になり得るが、同時に負債にもなる。資産か負債かを分けるのはデータの出自と再生成可能性だ。埋め込みモデルへのロックイン、元データの保全、権利関係と個人情報という潜在負債、資産性と負債性を分けて評価するDDを整理する。

SaaS買収時のAI“競争優位”格付け

「AI搭載SaaS」は強固な堀を持つ事業も薄いラッパーも等しく覆い隠す。中核機能がLLMに乗るSaaSを信用格付けのようにスコアリングする5軸(中核性・参入障壁・データ資産・スイッチングコスト・プロバイダー独立性)と格付けレンジ、買い手によるプレミアム検証、売り手による堀の可視化を整理する。

GitHub Actions・CIシークレットの監査

CI/CDは本番環境への最短経路だ。パイプラインのシークレットは本番を操作する強権限を持ち、設定不備は侵入経路になる。シークレット台帳と権限スコープ、退職者のadmin残存、ワークフロー権限とインジェクション、サードパーティアクションのサプライチェーン、自己ホストランナー、買収後の一斉ローテーションを整理する。

AIエージェントが書いたコードは引き継げるか

AIエージェント(Devin・Cursor)が介在した事業は、コードの静的品質ではなく「開発履歴」そのものを資産として評価する必要がある。なぜその設計かを記録する履歴の価値、高速生成が意思決定記録を飛ばす副作用、介在の開示問題、追跡可能性・レビュー/テストゲート・「人間が説明できるか」テストによる評価を整理する。

サーバレス事業のM&Aで企業価値はどう測るか

サーバレス事業は固定費が小さく変動費が大きい逆構造のため、現在の利益率を将来に外挿すると企業価値を見誤る。費目別の隠れコスト、ユニットエコノミクス、スケール時コストカーブによるバリュエーション再構築、サーバレスの正の側面の評価、成長シナリオ別の利益率提示までを実務目線で整理する。

Firebase・Supabaseプロジェクト移管の罠

BaaS事業の移管は「オーナー権限の移管」では終わらない。Firebase/Supabaseの課金アカウント紐付け、サービスアカウントのゾンビ権限、クライアント埋め込み設定とOAuth、認証ユーザー移行、Function・セキュリティルールの引き継ぎ、Firebaseの専有性とSupabaseのポータビリティ差をバリュエーション視点で整理する。

ノーコード事業に値段はついても、移管できない

ノーコード事業の本質は「値段はつくが移管できない」非対称性にある。収益は本物でも、Bubble・STUDIO・Webflowの内部に閉じたロジックは独立して所有できない。プラットフォーム別ロックインの実態、再構築コストの減点、価値を顧客・ブランド・データへ移す評価、ノーコードでも価値が成立する条件を整理する。