買い手向け

デジタル事業を買収する買い手向けに、技術・法務・財務のデューデリジェンスで見落としがちな論点を扱うカテゴリです。API依存度や技術スタックの持続性、契約・許認可の移管可否、粉飾や虚偽記載の見抜き方など、買収後に「知らなかった」では済まされないチェックポイントを実例ベースで解説します。

同意なきCookieは買収後の法的地雷

同意管理を実装せずCookieや広告タグを入れている事業は、買収した瞬間に是正義務と過去のリスクを相続する。同意バナーは何も止めていないのが常で、日本の外部送信規律とGDPRは別々に効く。タグの棚卸し、送信先とポリシーの突き合わせ方まで、買い手がDDで確認すべき点を整理する。

アプリ売却の事例が語らない移管作業

アプリ売却の事例は「いくらで売れた」を語るが、その数字を成約に変える移管作業は語らない。開発者アカウントの名義、署名鍵とAPIキー、データの引き継ぎ可否、属人性という見えない負債を、売り手が売る前にやること・買い手が数字の裏で確認することとして整理する。

選定理由が失われたアーキテクチャの罠

コードは残るが「なぜこの構成なのか」という判断の理由は、書かなければ消える。買い手は奇妙な実装を前に、制約下の合理的判断か単なる無知かを区別できず、区別できないコードには手を入れない。触られない領域が固定される構造と、1行のコメントで足りる処方箋を整理する。

外注コードの著作権は誰に残っているか

外注や業務委託で作られたコードの著作権は、契約に譲渡の定めがなければ制作者側に残るのが原則と解されます。代金を払ったから自分のものという直感と法律のズレが事業の売買でどう表面化するのか、売り手と買い手それぞれの確認手順まで実務の順序で整理します。

復旧手順が1人の頭にしかない事業

障害の復旧手順が1人の頭にしかない事業は珍しくない。手順書を書かなかったのは怠慢ではなく、読者が一度も存在しなかったからだ。真の壁は暗黙知が本人にも見えず、書けと言われても取り出せない点にある。買い手の検分方法と、録画による可視化を整理する。

隠された解約導線は買収後に牙を剥く

サブスク事業のチャーン率が業界平均より不自然に低いとき、その数字はプロダクトの良さではなく解約導線の摩擦を測っている可能性がある。誰も嘘をついていないのに数字の意味だけが違う構造と、買収後に抑え込まれた解約が噴き出す経路、買い手が実測すべき指標を整理する。

障害の第一報が買い手に届かない構造

買収したサービスが落ちても、その第一報が旧オーナーの私用メールや個人携帯にしか届かない。監視のアラートは鳴らない時が正常なため、宛先の誤りは平時に一切表面化せず、障害の瞬間まで発覚しない。通知先の棚卸しとテスト発報の実演を実務の順序で解説する。

監査ログがない事業は自分を守れない

監査ログは平時に1バイトの価値も生まないが、係争になった瞬間に当事者の唯一の武器へ変わる。引き渡し後に「データが消えた」と主張されたとき、記録が無ければ売り手は「やっていない」としか言えない。取得・改ざん耐性・保存期間の3点を実務の順序で整理する。

誰の権限も剥がせない事業を買う怖さ

少人数の事業では「全員が管理者」が最適解であり、権限の粒度が存在しない。だが売却では、誰が何を持つかの一覧が無く、剥がすと何が壊れるかも分からず、買い手は何も剥がせないまま運用を始めることになる。権限が人格に癒着した事業は、独立した資産として切り出せない。