買い手向け

デジタル事業を買収する買い手向けに、技術・法務・財務のデューデリジェンスで見落としがちな論点を扱うカテゴリです。API依存度や技術スタックの持続性、契約・許認可の移管可否、粉飾や虚偽記載の見抜き方など、買収後に「知らなかった」では済まされないチェックポイントを実例ベースで解説します。

個人開発の売却を止めるアカウント名義

個人開発の売却を止めるのは、コードでも売上でもなくアカウント名義である。ストア・クラウド・決済・ドメイン・ASPの名義を「移管できる/アカウントごと渡すしかない/規約上譲渡できない」の3レベルで判定し、売り手の棚卸し手順と買い手の移管可能性DDを整理する。

中核ノウハウがプロンプトに閉じ込められた事業

コードは薄いのに競合を上回るAIプロダクト。その競争優位はコードにもDBにも載らず、無数の試行錯誤の末にたどり着いた「プロンプト」という暗黙知に宿る。問題はそれが契約書にもコードにも明示されず、一人の頭の中にしか体系的に存在しないこと。プロンプト資産の不可視性、属人化の構造、移管できないことによる価値毀損、文書化・バージョン管理・帰属というDDの実務を整理する。

Evalがない事業は買収後に品質を再現できない

AIプロダクトのデモは感動的だが、モデルを差し替えた瞬間に品質が静かに崩れ、誰も気づけない。原因は品質を測る仕組み(Eval)の不在だ。評価データセット・指標・回帰テストの三層、Evalなき事業で起きる沈黙の劣化、目視確認の限界、Eval資産の移管可能性という品質DDの観点を整理する。「動く」を超えて「測れる・改善できる」事業がAIの価値を守る。

推論コストがAI事業の粗利を静かに溶かす

従来SaaSの粗利率80〜90%という常識は、AI SaaSでは通用しない。顧客が使うたびにGPU・トークンという売上原価が発生し、スケールが赤字を拡大させる逆ユニットエコノミクスが生じるからだ。トークン原価の構造、定額課金×従量原価の罠、多段呼び出しやリトライの隠れコスト、1リクエスト原価とLTV/CACの再計算という観点でAI事業のバリュエーションDDを整理する。

AIチャットボットの誤回答は誰が賠償するのか

カスタマーサポートをAIに置き換えた事業は、効率化と引き換えに新種の責任を抱える。チャットボットが誤回答(ハルシネーション)で顧客に損害を与えたとき、その賠償責任は事業者に帰属し、買い手は事業ごと承継する。海外の賠償事例の射程、日本の消費者保護・景表法・債務不履行の交差、免責規約の限界、ログ・ガードレール・保険という法務DD項目を整理する(法的助言ではなくDD論点の整理)。

ファインチューニング済みモデルは誰のものか

自社専用にファインチューニングしたモデルは、動いていても引き渡せるとは限らない。中核価値が宿る「重み」の所在、学習レシピと環境の再現性、Llama・Gemma等ベースモデルの商用条項、学習データの来歴という4つの盲点を移管DDの観点で整理する。重み・レシピ・データ・環境の四点開示と再学習リハーサルで、モデルを継承可能な資産に変える実務を解説する(法的助言ではなくDD論点の整理)。

AIエディタで書かれた事業コードの権利帰属

CursorやCopilotが生成した事業コードは誰のものか。M&Aの知財表明保証が前提とする権利の明確さがAI介在で揺らぐ。著作権保護の不確実性、学習データ由来の権利侵害リスク、AIツールの規約と権利移転、委託者の権利帰属契約、表明保証・補償・エスクローへの反映を技術と法務の境界で整理する(法的助言ではなくDD論点の整理)。